『フラバンジェノール®』がシミの原因となるメラニン生成への連鎖反応「メラニンカスケード」を遮断する新知見を発表
株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、中部大学 芋川玄爾 客員教授と共同で『フラバンジェノール®』が、シミの原因となる「メラニンカスケード(紫外線を浴びて引き起こるメラニン生成に繋がる一連の連鎖反応)」を遮断する新たなメカニズムをヒトメラノサイトで突き止め、第114回日本皮膚科学会総会において発表いたしました。
【演題】
フラバンジェノール®はUVB照射ヒトメラノサイトのEDNRB発現増強をMSK1阻害で抑制する
【講演者】
田頭 英樹1)、北村 整一1)、鍔田 仁人1)、山口 和也1)、髙垣欣也1)、芋川 玄爾2)
1)株式会社東洋新薬、2)中部大学 生物機能開発研究所
■『フラバンジェノール®』とは
『フラバンジェノール®』とは、フランス南西部ランド地方を主体に植林された海岸松の樹皮から抽出される東洋新薬の独自素材です。オリゴメリック・プロアントシアニジン(OPC)を主成分としたポリフェノールを豊富に含み、抗酸化作用や血流改善作用など様々な生理活性を示すのが特徴です。また近年強力な美白作用や抗シワ作用が確認され、各分野で注目を集めています。
当社は、これまでにフラバンジェノール®に関して様々な研究を進めており、美容分野では特にシミの中でも有訴者が半数近くになるともいわれる1)老人性色素斑(シミ)〔注①〕への美白作用を内服および塗布による臨床試験で確認しています。この老人性色素斑のメカニズムとして、メラニン生成の指令物質であるエンドセリン〔注②〕が関与していることが知られています。
エンドセリンは直接紫外線を浴びることで皮膚中で分泌される2)だけでなく、過去に浴びた紫外線ダメージによっても分泌されることが判明しており3)、ヒトメラノサイトでこのエンドセリンの受容体〔EDNRB;注③〕を介してメラニン生成が促進されることから美白・美容分野の一つのキーワードになっています。当社はフラバンジェノール®がUVB(紫外線)〔注④〕照射によるEDNRBの発現を抑制することを確認し、第112回日本皮膚科学会総会にて発表しております。
今回当社は、さらにEDNRBの発現を抑制する詳細なシグナルメカニズムを明らかにし、第114回日本皮膚科学会総会(2015年5月29日(金)~31日(日)、パシフィコ横浜)において発表しました。
■研究のポイント
今回、フラバンジェノール®の美白メカニズムとして着目したのは、「メラニンカスケード」です。
「カスケード」は「滝」を意味し、「メラニンカスケード」とは紫外線によって引き起こされるメラニン生成に繋がる滝のような一連の連鎖反応を指します。この反応はドミノのように一度始まるとなかなか止まらずEDNRBを介してさらにメラニン生成を助長させ、負のスパイラルを引き起こします。
そこで今回当社は、EDNRBの発現を抑制するメカニズムを探るために、フラバンジェノール®が紫外線を浴びたヒトメラノサイト〔注⑤〕で、どのように「メラニンカスケード」に作用するかを検証しました。
■発表骨子
ヒトメラノサイトにUVB(紫外線)を照射した時にEDNRBの発現をコントロールする因子を探索するとともに、フラバンジェノール®が及ぼす影響をウェスタンブロッティング法〔注⑥〕にて評価しました。
その結果、ヒトメラノサイトではUVBを浴びた時にメラニンカスケードが働き、p38→MSK1→CREB→MITFという細胞内シグナル伝達分子〔注⑦〕を連鎖的に活性化することでEDNRBの発現が増加することが初めて明らかになりました。フラバンジェノール®はこのメラニンカスケードの中で、p38には影響を与えず、MSK1以降のEDNBR発現に繋がる連鎖反応を遮断することでEDNRBの発現を抑制することが確認されました。
当社はこれまでにフラバンジェノール®の美白のメカニズムとして、ヒトメラノサイト内においてメラニン生成のプロセスであるチロシナーゼ〔注⑧〕の活性抑制や発現抑制効果を確認しておりましたが、今回の研究成果ではそれだけではなくMSK1の活性化を抑制することでEDNRBの発現を抑制し、外部からのメラニン生成促進の指令をヒトメラノサイトが受け取れなくすることで、相乗的に美白作用を発揮することが明らかとなりました。
東洋新薬は今後もフラバンジェノール®を用いた独自性の高い商品を開発し、より一層の拡販に注力して参ります。
〔注①〕老人性色素斑(シミ)
加齢により見られるスポット状のシミで、特に30代、40代で多く見られるようになります。シミの中でも代表的なもので、シミで悩む人の半数近くは老人性色素斑と言われています。
〔注②〕エンドセリン
メラニン生成のプロセスで、紫外線を受けると皮膚中にある表皮細胞から放出される情報伝達物質の一つで、エンドセリンはメラノサイトの受容体(エンドセリン受容体(EDNRB))に作用しメラニンを生成するよう指令を出します。
〔注③〕エンドセリン受容体(EDNRB)
メラニン生成の指令物質であるエンドセリンを受け取り、メラノサイト内にその指令を伝える役割を担います。
〔注④〕UVB
地上に届く紫外線のうち比較的波長が短い領域のものを指し、日焼けの要因となると考えられています。
〔注⑤〕ヒトメラノサイト
ヒトの皮膚に存在する細胞で、高いメラニン生成能力を持っています。美白素材がメラニン生成におよぼす影響を評価するために一般的に用いられています。
〔注⑥〕ウェスタンブロッティング法
無数にあるタンパク質の中から特定のタンパク質を検出する方法で、メカニズムを解明するために良く用いられている方法です。
〔注⑦〕細胞内シグナル伝達分子
細胞内外の情報を細胞内に順次伝達して、最終的に遺伝子発現などの細胞機能の変化をもたらす一連の分子群。この情報が流れる経路はシグナル伝達経路と呼ばれ、当社では、この一連の反応からメラニンが作られることから 「メラニンカスケード」と呼んでいます。
【p38】 :代表的な細胞内シグナル伝達分子の一つです。環境ストレスや炎症などの刺激で活性化され、これらの刺激への応答反応の中心的役割を担う分子です。
【MSK1】:p38の下流にあり、環境ストレスなどの刺激情報を仲介する細胞内シグナル伝達分子の一つです。
【CREB】:さまざまな刺激に対応して遺伝子の発現をコントロールする転写因子の一つです。
【MITF】 :メラニン生成をはじめ、メラノサイトの機能を幅広くコントロールするため、メラノサイトのマスター因子とも呼ばれる転写因子です。
〔注⑧〕チロシナーゼ
メラニン生成に関与する主要な酵素の1つで、メラニン生成過程のうち、アミノ酸の一種であるL-チロシンからメラニンが生成する過程などに関与しています。
=参考文献=
1)村上富美子, 溝口昌子: 色素異常症(色素沈着症)-いわゆるシミを中心として-. 日本皮膚科学会雑誌 114(14): 2305-2310 2004
2)Imokawa G, Yada Y, Miyagishi M: Endothelins secreted from human keratinocytes are intrinsic mitogens for human melanocytes. J. Biol.Chem. 267: 24675-24680, 1992.
3)Kadono S, Manaka I, Kawashima M, Kobayashi T, Imokawa G: The role of the epidermal endothelin cascade in the hyperpigmentation mechanism of lentigo senilis. J Invest Dermatol 116(4): 571-577 2001
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