東洋新薬 『すいおう(甘藷若葉末)』の血糖値上昇抑制作用の有効成分の解明 タンパク質が関与
株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、『すいおう(甘藷若葉末)』のタンパク質が血糖値上昇抑制作用のメカニズムの1つであるGLP-1分泌促進作用に関与することを確認し、第42回日本栄養・食糧学会北海道支部会において発表いたしました。
『すいおう(甘藷若葉末)』とは、サツマイモの一品種である「すいおう(翠王)」の茎と葉をまるごと粉砕し、粉末化した東洋新薬の独自素材です。「すいおう(翠王)」は、えぐ味と青臭さのためこれまで敬遠されがちだったサツマイモの葉・茎・葉柄をおいしく食べられるように開発された品種で、ポリフェノールを豊富に含むのが特徴です。
当社は既に、健常成人を用いた臨床試験において、すいおうの食後血糖値上昇抑制作用を確認し、青汁素材としての商品化も進んでおります。
また、北海道大学大学院農学研究院 原 博 教授、比良 徹 助教 および中部大学応用生物学部 津田 孝範 准教授との共同研究において、すいおうの血糖値上昇抑制作用およびそのメカニズムの1つとしてglucagon-like peptide-1(GLP-1)〔注①〕の分泌促進が関与することを確認しております。
今回当社は、同共同研究において、すいおうの血糖値上昇抑制作用の関与成分に関する知見を確認し、第42回日本栄養・食糧学会北海道支部会(2012年10月27日(土)、とかちプラザ)において発表いたしました。
【試験1】 すいおうの血糖値上昇抑制作用の関与成分の検討
■発表骨子
すいおうの血糖値上昇抑制作用の関与成分を探るため、すいおうを4つに分離したすいおう分画物(それぞれ画分1、2、3、4〔注②〕)を用いて検討を行いました。
2型糖尿病〔注③〕モデルマウスであるKK-Ayマウス〔注④〕に、すいおう3%を配合した普通飼料(すいおう群)、 またはすいおう分画物(画分1群、画分2群、画分3群、画分4群)をそれぞれ配合した普通飼料を5週間自由摂取させた後、血糖値を測定しました。なお対照として、普通飼料を自由摂取させた群(対照群)を設けました。
その結果、すいおう群、画分2群、画分3群で、対照群と比較して血糖値上昇の有意な抑制がみられました。
更に、すいおう分画物のGLP-1分泌促進作用に及ぼす影響をGLUTag細胞〔注⑤〕を用いて検討した結果においても、画分2、画分3で対照と比較してGLP-1濃度の有意な上昇がみられました。
これまでの研究において、すいおうの血糖値上昇抑制作用メカニズムの1つとしてGLP-1分泌促進が関与することを確認しておりましたが、さらに今回の結果から、画分2、画分3に含まれる成分が血糖値上昇抑制作用およびGLP-1分泌促進作用に関与することが示唆されました。
【試験2】 すいおうのGLP-1分泌促進作用関与成分に対するプロテアーゼ処理の影響
■発表骨子
すいおうのGLP-1分泌促進作用の関与成分としてタンパク質やペプチドが関与するかどうかを探るため、すいおうをタンパク質分解酵素であるプロテアーゼ〔注⑥〕で処理し、試験1と同様GLP-1分泌促進作用に及ぼす影響を検討しました。
その結果、すいおうプロテアーゼ処理物のGLP-1分泌促進作用が大きく低下し、タンパク質やペプチドが関与することを確認しました。さらに追加試験〔注⑦〕では高分子の画分に活性があることがわかりました。
このことから、すいおうのGLP-1分泌促進作用の一因として、すいおうに含まれるタンパク質が関与する可能性が考えられました。
■ 研究のポイントと今後の展開
今回の共同研究は、すいおうの血糖値上昇作用の関与成分を解明するために複数の試験を行いました。 試験1では画分2、画分3に含まれる成分が血糖値上昇抑制作用およびGLP-1分泌促進作用に関与することが示唆されました。このことから、すいおうに含まれる複数の成分が血糖値上昇抑制作用に関与している可能性が示されました。また、試験2では、これまで着目していたポリフェノールに加え、新たにタンパク質が関与することがわかりました。
すいおうは、これまでビタミンやミネラルなどの栄養成分やポリフェノールに注目が集まっていましたが、今回の共同研究の結果から、新たにタンパク質も特徴成分として確認されました。
既に、すいおうの食後血糖値上昇抑制作用を臨床試験にて確認していますが、今後はその関与成分を同定するための研究を進めていきたいと思います。
東洋新薬は今後もすいおうの機能性をさらに解明し、生活習慣病に対応した商品の開発に注力してまいります。
〔注①〕Glucagon-like peptide-1(GLP-1)
消化管上皮の内分泌細胞から分泌される消化管ホルモンで、食事を引き金として分泌される。
作用の一つに血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促進させることが知られています。
〔注②〕すいおう分画物
画分1:水に溶解し、かつ活性炭に吸着する成分を含む画分
画分2:水に溶解し、かつ活性炭に吸着しない成分を含む画分
画分3:水に溶解せず、60%エタノールに溶解する成分を含む画分
画分4:水に溶解せず、60%エタノールにも溶解しない成分を含む画分
(各画分の試験で用いた量は、すいおう中に含まれる相当量で算出。)
〔注③〕 2型糖尿病
血糖値を下げるインスリン分泌低下と感受性低下により発症するとされている。
主に食生活や運動などの生活習慣が関わっている場合が多く、わが国で糖尿病と診断される95%以上はこのタイプであると言われています。
〔注④〕KK-Ayマウス
肥満・高血糖を示し、2型糖尿病モデルとして一般的に研究で用いられるマウス。
〔注⑤〕GLUTag細胞
マウス大腸由来の消化管内分泌細胞で、GLP-1を産生・分泌するモデル細胞。
〔注⑥〕プロテアーゼ
タンパク質分解酵素。プロテアーゼの処理前後の作用を比較することで、タンパク性成分が作用に影響を及ぼしているかどうかが分かる。
〔注⑦〕追加試験
すいおうの抽出物を分子量の小さいものから大きいものに分けて試験1と同様のGLP-1分泌促進作用を確認したところ、分子量の大きい部分(高分子の画分)でGLP-1分泌促進作用が見られました。このことからタンパク質やペプチドの中で、分子量の大きいタンパク質がGLP-1分泌促進作用に関与することが考えられました。