2022年08月29日

大地の力研究所 大麦若葉末「むぎおう®」が善玉菌であるビフィズス菌を増やし、 腸内への定着を促す可能性を確認

株式会社アサヒ緑健と株式会社東洋新薬との間で設立された合弁企業「株式会社大地の力研究所(本社:福岡県福岡市)」は、大麦若葉末「むぎおう®」がビフィズス菌の増殖に与える影響と、腸管の細胞モデルへの定着に与える作用を検証し、日本食品科学工学会第69回大会において発表いたしました。

大麦若葉末は、イネ科オオムギ属に属するオオムギ(Hordeum vulgare L.)の出穂前の若葉部を乾燥・微粉砕加工した淡緑~濃緑色の粉末です。大麦若葉末は食物繊維を豊富に含み、青汁などの商品に利用されています。また、腸内細菌によって資化〔注①〕されることで、有益な生理作用を発揮する独特な機能性を有しています。
これまでに株式会社大地の力研究所では、大麦若葉末の機能性に関して様々な研究を進めてまいりました。
今回は大麦若葉末「むぎおう®」を用いて、ビフィズス菌の増殖に与える影響と、腸管の細胞モデルへの定着に与える作用について検証し、その結果を日本食品科学工学会第69回大会 (2022 年8月24日(水)~26 日(金)、オンライン開催)において発表いたしました。

研究のポイント
人間の腸内には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌〔注②〕の大きく3グループの腸内細菌が生息しており、これらの細菌群は総称して腸内細菌叢と呼ばれています。腸内細菌はそれぞれバランスを保ちながら共生しており、そのバランスが崩れて悪玉菌が増えると、免疫力の低下など健康面に影響を及ぼします。一方、健康な人の腸内細菌叢はビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が優位であり、これらが産生する乳酸や酢酸等によって腸内が酸性となるため、悪玉菌の増殖が抑制されています。よって、腸内における善玉菌の数を増やすことが、健康にとって重要だと考えられています。
善玉菌の代表例である、ビフィズス菌は、乳酸とともに殺菌力の高い酢酸を産生し、悪玉菌の増殖を抑制することで、腸内の環境を健やかに保つ役割を果たしています。しかし、ビフィズス菌を摂取しても、腸内には一定期間しか定着しないと言われています。よって、腸内でビフィズス菌を増やし、さらに定着率を高めることが重要であると考えられます。
今回、食物繊維を豊富に含む大麦若葉末「むぎおう®」がビフィズス菌の増殖に与える影響、ビフィズス菌の腸内への定着に与える作用を評価した結果、大麦若葉末「むぎおう®」が有する新たな機能性を見出しました。

■ 発表骨子
①大麦若葉末「むぎおう®」がビフィズス菌の増殖に与える影響
ビフィズス菌Bifidobacterium longum (以下、B. longum) の菌液を、大麦若葉末を含む液体培地に接種し、24時間嫌気培養〔注③〕しました(以下培養は全て嫌気的、37℃で実施)。さらに、培養した液を寒天培地に接種して48時間培養した後、プレートカウント法〔注④〕により生菌数を測定しました。
その結果、大麦若葉末「むぎおう®」がビフィズス菌の増殖率を高めることが示され、その影響が従来の大麦若葉末よりも大きいことが示されました 。

②大麦若葉末「むぎおう®」がビフィズス菌の腸内への定着に与える作用
蛍光標識化〔注⑤〕したビフィズス菌B. longumを、大麦若葉末を含む液体培地で24~36時間培養し、ヒト結腸癌由来細胞〔注⑥〕であるCaco-2細胞に接種しました。2時間後に蛍光を測定してCaco-2細胞へのビフィズス菌の定着率を評価した結果、大麦若葉末「むぎおう®」ありの場合は、なしの場合に比べてCaco-2細胞へのビフィズス菌の定着率が高いことが明らかとなりました。よって、大麦若葉末「むぎおう®」がビフィズス菌の腸管への定着率を高めている可能性が示されました 。

株式会社大地の力研究所は今後とも大麦若葉末の機能性をさらに解明し、新規商品の開発に注力してまいります。


〔注①〕資化
細菌がある物質を取り込み、それを生育するためのエネルギー源として利用することを指します。

〔注②〕善玉菌・悪玉菌・日和見菌
善玉菌…腸内で乳酸や酢酸を産生することで、悪玉菌の増殖を抑制し、健康維持に貢献する菌です。
悪玉菌…腸内で有害物質(発がん性物質など)を産生することで、身体に悪い影響を与える菌です。
日和見菌…善玉菌と悪玉菌のどちらにも属さない菌です。善玉菌が優勢な状態では無害ですが、悪玉菌が優勢な状態では有害となる可能性があります。

〔注③〕嫌気培養
酸素のない環境で菌を培養する方法で、ビフィズス菌は偏性嫌気性菌であるためこの方法で増殖させます。

〔注④〕プレートカウント法
菌液を適切な濃度に希釈して寒天培地に塗布し、生育したコロニーを数えることで菌の増殖率を評価する方法です。コロニーは、培地上に形成された細菌の集落を指します。

〔注⑤〕蛍光標識化
観察や測定を容易にするため、観察対象が蛍光を発するよう試薬(DAPI:4′,6-diamidino-2-phenylindoleなど)などにより処理することを指します。

〔注⑥〕ヒト結腸癌由来細胞(Caco-2細胞)
ヒトの結腸癌から単離された細胞で、腸における食品成分等の吸収を評価する際に利用されます。

▶お知らせ一覧にもどる

▶学会発表一覧にもどる