愛媛県との連携協定に基づく成果第2弾を発表―高級柑橘『紅まどんな』が育毛に不可欠な外毛根鞘を保護―
株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、愛媛県産業技術研究所との共同研究で、愛媛県限定栽培の柑橘『紅まどんな』の果皮抽出物が育毛に不可欠な外毛根鞘を保護することを確認し、第34回和漢医薬学会学術大会において発表いたしました。
【演題】
紅まどんな果皮抽出物の育毛への有用性の評価
【講演者】
川村 弘樹1)、尾上 貴俊1)、北村 整一1)、越智 佳直2)、玉井 敬久2)、福田 直大2)
1)株式会社東洋新薬、2)愛媛県産業技術研究所
■『紅まどんな』とは
『紅まどんな』とは、愛媛県が開発し2005年に品種登録(登録名:愛媛果試第28号)した柑橘で、このうち光センサー選果機等で選別し糖度、外観など一定の品質基準をクリアした果実で愛媛県内JAグループのみが使用できる呼称です(JA全農の登録商標)。果肉は柔らかくゼリーのような食感で、果皮は薄く滑らかで濃い紅色をしています。愛媛県内でのみ生産されており、市場に出回る量は少なく、主に百貨店などで年末贈答用に販売されています。
一般的に柑橘の果皮には育毛作用があることが知られており、育毛剤などに利用されています。そしてそのメカニズムとして、血行促進作用、5αリダクターゼ〔注①〕阻害作用、毛母細胞〔注②〕の活性化作用などが知られているものの、外毛根鞘〔注③〕に対する作用については、これまで報告されていませんでした。
今回、当社と愛媛県産業技術研究所は、『紅まどんな』の果皮抽出物が育毛に不可欠な外毛根鞘を保護することを確認し、第34回和漢医薬学会学術大会(2017年8月26日(土)~27日(日)、福岡国際会議場)において発表いたしました。
■研究のポイント
当社は2013年12月に愛媛県と連携・協力に関する協定を締結しており、愛媛県産業技術研究所との共同研究を通じ、愛媛県の農林水産物を活用した機能性素材を開発するとともに、地域産業の活性化に取り組んでおります。今回、愛媛県が開発した『紅まどんな』の果皮抽出物(以下、紅まどんな)が毛髪へ及ぼす影響について、ヒト由来の外毛根鞘細胞を用いてin vitroで評価しました。その結果、紅まどんなには、育毛に不可欠な外毛根鞘を保護するという新しい作用があることが明らかになりました。
■発表骨子
外毛根鞘とは、毛包の最も外側を構成している組織であり、毛髪を支える役割を担うほか、毛母細胞のもととなる幹細胞を供給する機能を持つことが知られています。また、酸化ストレスにより、外毛根鞘の細胞死が誘導されることも報告されています1)。このことから、外毛根鞘細胞の抗酸化機能を向上させることは毛髪の成長・維持に貢献することが期待されます。
そこで、紅まどんなが活性酸素種〔注④〕による酸化ストレスからヒト外毛根鞘細胞を保護する作用について評価しました。ヒト外毛根鞘細胞に紅まどんなを添加して培養した後、過酸化水素を添加し、細胞内の活性酸素種量を評価したところ、紅まどんなの添加により活性酸素種量が低減することが確認されました。
さらに、活性酸素種量低減のメカニズムを探るため、抗酸化機構を活性化することが報告されている因子であるFGF-7〔注⑤〕に着目し2)、紅まどんなをヒト外毛根鞘細胞に添加し、FGF-7の遺伝子発現量を定量的RT-PCR法〔注⑥〕により解析しました。その結果、紅まどんなの添加によりFGF-7遺伝子の発現が亢進されることが確認されました。
以上のことから、紅まどんなは、FGF-7の発現亢進を介して抗酸化機構を活性化し、活性酸素種による細胞死を抑制することで外毛根鞘を保護し、育毛に関与する可能性があることが示されました。
東洋新薬では今後も『紅まどんな』の機能性を探求し独自性の高い素材開発、商品開発に注力して参ります。
〔注①〕 5αリダクターゼ
男性ホルモンである5αジヒドロテストステロンを産生する酵素であり、脱毛の誘導に寄与します。
〔注②〕 毛母細胞
毛髪のもととなる細胞。毛髪の成長は、毛母細胞の増殖・分化によって進行します。
〔注③〕 外毛根鞘
毛母細胞のもととなる幹細胞を供給する組織。育毛に重要な役割を担っています。
〔注④〕 活性酸素種
細胞のDNA・タンパク質・脂質などを損傷させ、細胞死を誘導します。
〔注⑤〕 FGF-7
線維芽細胞増殖因子-7(Fibroblast growth factor -7)。毛髪の伸長を促す成長因子です。
〔注⑥〕 定量的RT-PCR法
遺伝子を増幅させることで、その遺伝子の発現量を定量的に測定する方法です。
=参考文献=
1) Lu Z et al., J Invest Dermatol., 129(7), 1790-804, 2009.
2) Braun S et al., J Cell Sci., 119(23), 4841-9, 2006.